今回は、「恋」について考えてみます。
まずは、辞書で「恋」を調べてみましょう。
1 特定の人に強くひかれること。また、切ないまでに深く思いを寄せること。恋愛。「―に落ちる」「―に破れる」
2 土地・植物・季節などに思いを寄せること。
デジタル大辞泉(小学館)
恐らく、現代では1の意味で用いられることが多いでしょう。
「特定の人に強くひかれること」であり、「恋愛」とほぼ同義と説明されています。
と、ここまでは納得。
しかし、前回の記事で「愛」について語源から考えたこともあり、「恋」についてももう少し深く掘り下げて考えてみたくなりました。
「こい」について
まずは、平仮名での「こい」の語源を調べてみましょう。
「恋ふ」は、人に対して物を与えてくれるよう求めたり、何かをしてくれるよう願う意味の「乞う(こう)」と同根で、古くは、異性に限らず、花・鳥・季節など、目の前にない対象を慕う気持ちを表した。
https://gogen-yurai.jp/koi/
「こい」は「乞い」。
恋の動詞表現である「恋ふ」は「乞う」と同根であるとのこと。
また、「異性に限らず」「目の前にない対象を慕う気持ち」であったことがわかります。
なにかを求める気持ちを「こい」と表現し、それが「恋」となったとわかります。
“ I want you! I need you! I love you!” といえば、AKB48の楽曲「ヘビーローテーション」(作詞:秋元康)の印象的な歌詞ですが、改めてこのフレーズを読むと、 “love” だけでなく、 “want” や “need” といった言葉で「恋」を歌っています。
「恋」を “love” と英訳するのはシンプルですが、「恋」という言葉が表す感情には “want” や “need” も含まれているということを、見事に表現されていると感じます。
「恋」について
続いて、「恋」という漢字の成り立ちについてみてみます。
「恋」の旧漢字は「戀」で、上部は「絲」+「音」からなり、もつれた糸にけじめをつけようとしても、容易に分けられないことを表し、「もつれる」と同系である。
https://gogen-yurai.jp/koi/
これに「心」を加えた「戀(恋)」は、心が乱れて思い切りがつかないことを表す。
旧漢字の時点で「もつれる」というニュアンスが含まれているということが興味深いです。
古くから、人は「恋」に心を乱されていた……
恋の悩みにも長い歴史があるのだと思うと、人にとって「恋」とは難しいテーマなのだと感じます。
(参考:「心」について考えた記事)
感情を糸に喩えているのだと解釈しますが、恋から連想するキーワード「糸」が旧漢字に含まれているのも面白いです。
例えば、「赤い糸」であったり、中島みゆきの「糸」であったり。
どこかに共通性があるのでしょうか。
(例えば、日本人が「糸」に抱くイメージ?)
「赤い糸」についても調べてみると、また面白いことがわかってきますが、ここで書こうとすると長くなるので機会を改めたいと思います。
「恋」と「愛」について
「恋愛」というように、ひとまとめに用いられる「恋」と「愛」ですが、これらはイコールなのでしょうか。
前回の記事で考えたことを振り返ると、「愛」とは「なにかに心を惹かれて、あるいは、満たされて、足が止まる心情」のこと。
「恋」≒「愛」のようにも思えます。
強いていえば、「恋」には「乞う」(≒want, need)のニュアンスがあり、「戀」という旧字で糸がもつれるように心が乱される様子が表されていることから、「恋」は求める意味合いが強く、その過程での葛藤も含まれているということなのでしょうか。
「恋」と「愛」の違いは?という問いは奥が深いものです。
例えば、① 恋を描いた物語、② 愛を描いた物語 と聞いたときに、受ける印象が異なるのは私だけでしょうか。
① には切なさやときめきを、② には温かさを感じます。
(「恋」や「愛」に関する個人的な経験にも関係するかもしれません)
もうひとつ例を上げると、英語では「愛」も「恋」も love ですが、「愛している」は “ I love you.” で「恋している」は “ I’m in love with you.” となり、表現に違いがみられます。
似ているけど違う。
ニアリーイコール(≒)と思いきや、実は大きな違いがありそうです。
「恋」と「愛」の違いについては、すでにたくさんの議論がなされていると思いますが、改めて自分で考えてみることには興味を唆られます。
永年のテーマである「恋」や「愛」について
じっくりと時間をかけて考えていきたいものです。
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