リフレーミングという言葉を私は「誤解」していました。
辞書で「リフレーミング」を調べてみると、次のような説明があります。
リフレーミング【reframing】 の解説
心理学で、ある事柄を、今までとは別の視点で見直すこと。
[補説]多く、消極的・否定的な視点を積極的な視点へ切り替え、ストレスの軽減などに役立てることにいう。例えば、「10人の受験者のうち、5人が合格」という事柄は、「半数しか合格しない」とも考えられるが、「半数も合格する」と考えることもできる。
デジタル大辞泉(小学館)
私のいう「誤解」とは、リフレーミングの一面しか見ていなかったということです。
引用した説明でいうところの「補足」、すなわち、「多く、消極的・否定的な視点を積極的な視点へ切り替え」という部分ばかりを「リフレーミング」として捉えてしまっていました。
リフレーミングは、reframing の言葉の通り、「別の視点で見直すこと」であるとすれば、「消極的→積極的」だけでなく、「積極的→消極的」という転換も考えられます。
「言葉遊び」のような印象は否めませんが、言葉の用いられ方は、状況によって異なるため、正解は一つではありません。
別の視点で考えることで、見えてくることもあります。
そこで、今回は、「積極的→消極的」への転換、いわば「逆方向のリフレーミング」について考えてみたいと思います。
リフレーミングをリフレーミングしてみます。
なぜ、「リフレーミング」=「消極的→積極的」のイメージが強いのか?
「リフレーミング」は、コーチングや相談援助の場面で用いられる手法であり、その対象は、消極的・否定的な視点から悩みを抱える人です。
そのため、状況を改善するために「消極的→積極的」のリフレーミングが多く用いられるのだと理解します。
悩みを抱える人に対するアプローチとして、「消極的→積極的」へと転換するリフレーミングは「正解」といえるでしょう。
逆方向のリフレーミングの必要性
そう考えると、「逆方向のリフレーミング」は、上で書いたような「悩みを抱える人と向き合う」状況では適切とは言えません。
ネガティブな感情を増大させ、さらに悩みを大きくしてしまうかもしれません。
では、「逆方向のリフレーミング」は不必要かというと、必ずしもそうではないと考えます。
そう考えたのは、次の記事がきっかけです。
■逆リフレーミングも時には必要
たぶん研修では『マイナス→プラスのリフレーミング』しか学ばない気がします。
私はその逆の『プラス→マイナスのリフレーミング』も覚えておくべきだと考えます。
例えば
子どもが元気よく遊んでいる→近所にうるさいと思われてるかもしれない。
15分もある→ギリギリだから急いでほしい。
自分がプラス思考になっていると周りにマイナスに思われているとは考えづらいものです。
調子が良い時こそ、何か落ち度はないかと視点を変えてみることも必要ですね!
「リフレーミングすると良い感じ!」
「プラス→マイナス」と書くと、ネガティブな印象があるかもしれませんが、それは多面的に考えるということでもあります。
こちらの記事で書かれているように、他者の視点で考えるということでもあり、主観から少し離れて客観的に自分自身を見つめようとすることでもあります。
特に自分自身に対しては、逆方向のリフレーミングも必要になることでしょう。
それは、内省するということに繋がります。
内省はreflection
reframingと同じく、「逆に」「後ろに」「再び」などの意味をもつ接頭辞 re- から始まることから考えると、内省とリフレーミングは相性が良さそうです。
悲観的態度の必要性
以下の記事のなかで、悲観的な態度の必要性について書きました。
この記事のなかでご紹介した心理学博士イ・ミンギュ氏の言葉を再掲します。
決心を最後まで保って目標を達成するには、楽観的な態度だけでなく、悲観的な態度も併せ持つことが不可欠だ。なぜなら、願いさえすれば何でも手に入るという安易な考えよりも、成功に結びつくルートを探し出し、その過程でぶつかる問題を予想しながら、対策を立てることの方がより重要だからだ。
イ・ミンギュ『「後回し」にしない技術』
悲観してばかりでは状況は変わりませんが、楽観してばかりでも同様です。
マイナス→プラスのリフレーミングにばかり偏ることは、楽観的な態度ばかりを強めてしまうかもしれません。
現実には苦しくも悲観的な態度をもって、向き合うべき状況もあります。
プラス→マイナスのリフレーミングは、現実と向き合うための手続きといえるでしょう。
双方向のリフレーミングの使い分け
「マイナス→プラスのリフレーミング」と「プラス→マイナスのリフレーミング」
大切なのはその使い分けだと考えます。
落ち込んでいるときや自信をもてないときには、マイナス→プラスのリフレーミングで気持ちを前向きにすることが必要です。
一方で、調子が良いときには、プラス→マイナスのリフレーミングで内省することも意義があると思います。
それは、課題やリスクを想定することでもあり、現実的・具体的に行動するための段取りともいえます。
楽なことではありませんが、気力のある時には、逆方向のフレーミングにも挑戦してみたいものです。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました!
コメント