「幸」と手枷 — 漢字の由来から「幸」の追求を考える

今回は「幸」という漢字について考えてみます。

「辛」に「一」を足して「幸」……

という話をたまに聞きますが、これは本当なのでしょうか。

結論から書きますと、漢字の成り立ちを調べた限りでは、どうやら少し違うようです。実は、「幸」とは意外なものを表した漢字です。

なお、「辛」については以下の記事でふれています。

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「幸」の漢字の成り立ち

「幸」は古代中国の手枷の形を表したものです。

これを知ったとき、震えました。どういうことなの……

多くの刑の中で、生命や身体の一部を失うことがない手かせをはめられて、手を使う自由だけを奪(うば)われる刑である「幸」は、とても「しあわせ」だったのです。

https://www.47news.jp/21865.html

古代中国にはもっと厳しい刑罰があったそうです。

詳しく書くことはできませんが、命を奪う刑罰であったり、それに準ずる痛みを伴うものであったり……

そうした中で、手枷を嵌められる「だけ」というのは「幸」であった。

そこから 「幸」が “happy” “lucky” な意味をもつようになったのだそうです。

相対的な「幸」と言いますか、なんと消極的・消去法的な「幸」の捉え方なのだろうと思いました。

しかし、同時に、この「幸」の考え方は現代にも通じるものがあるのではないか?とも考えました。

現代の手枷

漢字の成り立ちから解釈すると、「幸」は制約されたなかで感じる「しあわせ」ということになります。

この解釈に基づくと、現代の「幸」も漢字の成り立ちの流れを汲んでいるのではないかと感じます。

現代の「手枷」とはなにか?

それは、人にコントロールできない要因です。

たとえば、いわゆる「属性主義」という概念があります。

当人の実力や実績よりも、家柄・身分・性別といった出自に関する要素(=属性)を重視して、考課などの基準とすること。もっぱら社会学において「業績主義」と対比される概念。

実用日本語表現辞典

私が SNS のプロフィールに掲げている「属性にとらわれず、自分らしく生きる道を選びました」という文言は、この概念への対抗意識を含むものです。

人は生まれたときから、本人には容易に変えられない属性をもちます。

家柄・身分・性別・人種・国籍・身体的特徴 など。

人として生まれた時点で、人という属性を付与されているともいえます。

鳥のように空を飛ぶことはできないし、魚のように水中を自由に泳ぐこともできません。

人は生まれたときから人という属性に制約されて生きていると考えることもできます。

これは極端な例ではありますが、人は与えられた属性に縛られながら生きています。

そして、その属性によって葛藤を抱えることも少なくありません。

属性による差別は現代にも残存しています。

人生とは、制約されたなかで、いかに幸せを求めていくかという戦いなのかもしれません。

手枷つきの「幸」を求める

属性は容易には変えられません。

(整形手術であったり、国籍変更であったり例外はありますが……)

それならば、幸せの実現とは、手枷を外す(=属性を変える)というよりも、手枷があっても幸せを感じられる状態を意味するかもしれません。

*「手枷を外す」と表現しましたが、属性を変えることは新たな属性を付与されることでもあるため、厳密には「手枷を付け替える」という表現がしっくりきます。

手枷を嵌められた「幸」

はじめは消極的な「幸」の捉え方だと感じましたが、こうして考えていくと大切な姿勢にも繋がっていくのではないかと思います。

少し話題がそれますが、ゲーム『FINAL FANTASY 零式』のキャッチフレーズを思い出します。

人は生まれる時代も世界も選ぶことはできない。

しかし、どう生きるかを決めることはできる。

https://www.jp.playstation.com/software/title/jp0082npjh50443_000000000000000000.html

言い換えるならば、

人はどう生まれるかは選ぶことはできない。しかし、どう生きるかを決めることはできる。

差別が解消され、誰もが「どう生きるか」を決めることができる社会が実現することを切に願います。

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この記事を書いた人

属性にとらわれず、自分らしく生きる道を選びました。

音楽やメイクを嗜みます。

ジェンダーレス志向です。
多様性が認められる世の中になることを願っています。

大学院修士課程修了(社会科学系)

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