目が肥える喜び – 読めば読むほど読みたくない本も増える

本を読めば読むほど、読みたい本が増える。
……とは限らない。

確かに、ある分野の本を読み終えた後には、同じ分野の別の本を読んでみたいと思うこともある。
しかし、読みたい本は単調に増え続けるわけではない。

読書を継続すると、読みたい本が増える一方で、読む気にならない本も現れてくる。
読みたい本の数を+とし、読みたくない本の数を−とするならば、その足し引き計算の結果、+が上回れば「読みたい本が増える」ということなのだと思う。

なぜ、読書を継続すると、読みたくない本が現れるのか。
その理由には、例えば以下のようなものがある。

既に知っていることが増えた結果、目新しさを感じなくなったから。
読書を通じて、思想や文章表現の好き嫌いが明確になったから。

つまり、いわば「目が肥えた」からである。

『大辞泉』によれば、「目が肥える」とは「よいものを見慣れて、よしあしを見分ける力が増す」こと。
ただし、ここで大切なのは「よしあし」とは、本の価値ではなく、自分自身にとっての「よしあし」であるということだ。
主観的な重要度であり、主観的に「読みたくない」と感じるからといって、その本に価値がない訳ではない。

そして、この「目が肥える」現象は、悪いことではなく、むしろ良いことなのだと思う。
世界には、一生をかけても読み切れない数の本があり、その数は今後も増え続ける。
読みたい本が単調に増え続けても、それを全て読了するための時間は人間にはない。

だからこそ、「読みたい」「読みたくない」の仕分けは必要になる。

放っておいても「読みたい」は膨張し続けるので心配はいらない。
無数の中から、自分に合った多数を選び出していこう。

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この記事を書いた人

専門学校講師兼塾講師
大学院修士課程(社会科学系)修了

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