辛いときの対処法のヒント – 哲学者アランの『幸福論』に学ぶ

辛いときや悲しいとき、自分自身の心と向き合おうとすることは大切です。

しかしながら、同様に、身体の調子にも意識を向けることも大切なのかもしれません。

これに関して、哲学者アランの『幸福論』中に、考えさせられる一節がありました。

 

(感情の起伏がある女性の血液を調べたところ、喜びの季節には血球数が増加し、悲しみの季節には血球数が減少する法則が見出されたというエピソードに関して)

つらい判断や、不吉な予言、いまわしい過去の出来事をくよくよと考えれば考えるほど、自分の悲しみがまざまざと蘇ってくる。それはつまり、悲しみを味わっているようなものだ。ところで、血球数が問題なのだと知ることは、自分の考えがばかげていたと笑いながら、その悲しみをつっぱねて、からだの中に押しやることだ。からだの中では悲しみはもう単なる疲労か病気にすぎない。何の飾りもなくなる。裏切られることよりも胃の痛みに耐えることのほうが楽である。

アラン 幸福論 (岩波文庫)

 

「単なる疲労か病気」という捉え方は、なかなか潔いもので、抵抗を覚える方もいるかもしれません。

病気の種類によっては、さらなる悲しみを引き起こす可能性もあります。

 

ただ、心の問題に思える「悲しみをつっぱねて、からだの中に押しやる」というのも、心身を守るために必要な考え方なのではないかと思います。

 

辛いことや悲しみを、心だけの問題としてしまえば、その原因を自分や他人に求めることになります。自虐的・他罰的な考えにとらわれてしまうと、それがさらに悩みを深刻なものにしてしまうかもしれません。

抱える悩みの全てを心だけの問題としてしまうことは、身体にもよくありません。身体の不調が悲しみとして顕れているのだとすれば、それは身体から感情を経由して届けられている兆候を見落とすことにもつながります。

 

心と身体は繋がっています。

辛い、悲しい、気分が上がらない……

そんなときには、見過ごしている身体からの訴えがないかどうか、確認してみることが大切だと思います。

心のケアはもちろんのこと、身体のケアも欠かさずに。

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この記事を書いた人

専門学校講師兼塾講師
大学院修士課程(社会科学系)修了

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