高い理想をもつのは大切なことです。
理想は行動の原動力となってくれます。
理想がなければ、何か行動を起こそうという気持ちにはなれません。
しかし、理想が高いだけでは不十分です。
高い理想に浸り過ぎることは、目標を達成するうえでの障害になることもあります。
今回の記事では、「高い理想をもつ上での留意点」について書いていきたいと思います。
「プラスの自己暗示」が目標達成の邪魔になる?
心理学博士のイ・ミンギュ氏は、著書『「後回し」にしない技術』のなかで、次のように述べています。
「切実に願い、生き生きとイメージしさえすれば、夢がかなう」といったプラスの自己暗示は、実際には思ったより効果がなく、目標を達成するうえでかえって邪魔になることもある。
イ・ミンギュ『「後回し」にしない技術』
「イメージすることの大切さ」については、多くのビジネス書や自己啓発書等で書かれていることです。
私の母校では、受験に向けてポジティブ思考やプラスの自己暗示を学ぶ課外授業が行われていたこともあります。
(今になって考えてみれば、科学的根拠に乏しい内容で、公立学校での教育として適切といえるのか疑問にも思いますが……)
イ・ミンギュ氏は、その主張の根拠として、心理学者リエン・ファム氏の研究結果を提示しています。
概要は以下の通り。
- 大学生を対象として実験を実施。
- 学生を2つのグループにわけ、1つのグループには「テストで高い点数を取った場面」をイメージさせ、もう1つのグループにはイメージさせなかった。
- 実際にテストでの点数を比べてみたところ、高い点数をとったのは、イメージしなかった学生であった。
意外ではありますが、「ポジティブなイメージを抱くことが、必ずしも望む結果に繋がるとは限らない」ということがわかります。
バラ色の未来を「イメージ」してばかりいる人たちは、成功を手にする前に簡単に挫折してしまい、イメージの中に逃げ込む可能性が高い。
イ・ミンギュ『「後回し」にしない技術』
イメージを現実にするための前提条件
願いをかなえるために、それを心の中でイメージすることについて、イ・ミンギュ氏は否定していません。
しかし、それだけでは不十分であるといいます。
目標を達成した姿をイメージするだけでは駄目だ。イメージを現実にするには、必ず満たしておくべき前提条件がある。それは、成功への道を探し出すこと。そして、その過程でどんな障害にぶつかるかを予想し、それを克服する方法を知らなくてはならない。
イ・ミンギュ『「後回し」にしない技術』
現実的な考え方です。
目標を達成するためには、そこまでの過程をクリアしなくてはなりません。
ゴールを見つめているだけでは、前進することはできません。
人生の成功を手にするには、目標を達成した場面をイメージする「ゴールの視覚化(Outcome-oriented Visualization)」よりも、目標までのルートを正しくとらえる「プロセスの視覚化」の方がずっと重要なのだ。
イ・ミンギュ『「後回し」にしない技術』
「目標達成のためにイメージすること」を「ゴールの視覚化」と「プロセスの視覚化」にわけて考えることは大切だと感じます。
「イメージすれば実現する」という言葉を鵜呑みにせず、「プロセスの視覚化」が疎かになっていないか確認してみる必要がありそうです。
悲観的な態度の必要性
ポジティブ思考やプラスの自己暗示は、「楽観的な態度」といえます。
(そもそも”positive”は「楽観的」の意味をもちます)
ネガティブ思考を嫌い、ポジティブ思考を好む人も少なくありませんが、イ・ミンギュ氏は悲観的な態度の必要性について述べています。
決心を最後まで保って目標を達成するには、楽観的な態度だけでなく、悲観的な態度も併せ持つことが不可欠だ。なぜなら、願いさえすれば何でも手に入るという安易な考えよりも、成功に結びつくルートを探し出し、その過程でぶつかる問題を予想しながら、対策を立てることの方がより重要だからだ。
イ・ミンギュ『「後回し」にしない技術』
現実に向き合うためには、悲観的な態度をとることも必要です。
「理想を追い続ければうまくいく」という考え方は、現実から目を逸らす危険性も孕んでいます。
理想よりも現実は厳しい。
現実と向き合うことは、ときに苦痛を伴うものでもありますが、現状を変えて理想に近づくためにはそうした痛みを乗り越える覚悟が必要です。
楽観的な態度と悲観的な態度。
どちらかが良いというものでもありません。
楽観的な態度ばかりでは現実逃避に走ってしまいますが、悲観的な態度ばかりでも気持ちが沈んでしまいます。
2つの態度をバランスよくもつことが大切だとわかります。
(イ・ミンギュ氏は「両面的思考(Double Think)」と表現しています。)
まとめ
「高い理想を抱き続ければ、いつかそれは実現する」というポジティブなメッセージは、心地よくて、勇気づけられるものです。
しかし、鵜呑みにすることは危険です。
より現実的で具体的に考えていくことが、大切な「理想」を実現するうえでは必要となりましょう。
それは決して、高い理想を否定するものでも、理想を下げることを求めるものでもなく、むしろ、「理想を実現するために必要なプロセスを経ていく」という建設的な考え方でもあります。
過度な楽観的態度に陥るのではなく、悲観的であれ現実的に考え行動していけるよう心がけたいものです。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました!
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